過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
「……ずっと、どこで俺は間違えたんだって考えてた。たぶん、結婚の提案をしたときだったと思う」
「後悔してる?」

 樹生はひざの上の手を握りしめてくる。不安に揺れるまなざしを、お互いに見つめ合う。

「後悔してるよ。なんで、期間限定にしようなんて言ったのか。俺は傷つきたくなかったんだ。縛りつける気はないなんて言って、七海が別れたがったときに、終わらせるための名目がほしかった」
「だったら、結婚しようなんて、言わなくてもよかったよ」

 そんな重荷になってまで、結婚したかったわけじゃない。樹生のためなら、結婚していようがいまいが、全力で力になったはずだ。

「結婚……したかったんだ、俺が」

 樹生はいきなり、ひざの上に抱き上げてきた。ぎゅっと抱きしめられて、こめかみに触れる唇に胸がはち切れそうになる。すがるような愛情を見せるなんて思ってなかった。

「友澤の後継者になるよう言われたとき、思ったんだ。もし、七海と付き合えたとしても、親父のように、いつか婚約者を決められるかもしれない。母のように、七海は結婚したくないと言うかもしれない。そうなる前に、契約結婚してしまえばいいと思った」
「それが、お互いが重荷にならない方法だと思ったの?」

 樹生は頼りなさそうに笑って、七海の髪を何度もなでた。

「でも違った。理想とする結婚生活なんてなくて、ただ七海を不安にさせてるだけだった。一緒に生活しながら、お互いをわかり合っていけばいいなんて思ってたのは、ただのきれいごとだった」
< 71 / 80 >

この作品をシェア

pagetop