過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
「なんとかほど可愛いと言うからね。善則氏も同じだろう。親父を可愛がっていたのは、祖父の富一だった。それでも、マネジメントの社長に善則を据えたのは、祖父の情けだったかもしれないね。子会社なら問題ないと思ったんだろうが……」

 樹生は忌々しげにつぶやいて唇を噛んだが、七海の不安そうな様子を見ると、すぐに笑顔になった。

「七海を俺の妻として紹介するよ。何も心配いらない」
「心配なんて、してないよ」

 そうは言ったものの、友澤のり子に会うのは緊張した。厳格な人物として有名で、彼女に叱責された社員が退職に追い込まれたことも、かつてはあったようだ。

 応接室に集まっているのは、洋一社長に樹生、先ほどやってきた善則と宏弥、そして、七海だった。

「お祖母(ばあ)さんが来る前に話しておきたいんですが」

 沈黙を破ったのは、樹生だった。

「いま話さないといけないか?」

 洋一が口を出すが、樹生の目はじっと宏弥に注がれている。宏弥は苦々しげに唇を歪ませた。

「なんだよ」
「君の彼女が昨夜、俺の妻を傷つけたのは知ってるか?」
「は? 何の話だよ」
「折田梨々子。彼女が君にふられた腹いせで妻を傷つけたんだ。朝一で退職届を持ってきた。二度と、妻には関わらせないでくれ」

 洋一は驚いたように七海を見る。

「本当なのか?」
「……はい、本当です。少しけがをしましたが、副社長が助けてくださいました」

 なんとも呆れたような、怒りを感じたような複雑な顔つきで、洋一は宏弥をにらみつける。

「俺は知らない。梨々子が勝手にやったんだろう」

 宏弥は目をそらす。
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