過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
「……宏弥、帰るぞ。本当に、おまえのせいで」
「親父がやれって言ったんだろ。加賀に譲るぐらいなら、潰れてもかまわないって」
「うるさいっ」

 のり子がふたたび、大きなため息をつく中、善則親子は罵り合いながら出ていった。

「まったく……」

 頭を抱えるように、ひたいに手をあてたのり子は、七海へと目を移す。

「情けない姿を見せたわ」
「いえ……」
「七海さんと言ったわね。樹生と結婚したのは本当のようね?」
「はい。ご挨拶が遅れましたこと、お詫び申し上げます」

 緊張しながら頭をさげる。入籍したとはいえ、反対されたらどうしよう。のり子は筋を通さなかったことを許す人ではない気がする。

「樹生は私が嫌いでしょうから、会わせてくれるとは思ってもいませんでしたよ」
「お祖母さん、嫌ってはいませんよ」
理沙子(りさこ)さんは友澤が嫌いだったじゃない。それも私がきつく当たったからでしょう?」

 理沙子というのは、樹生の実母だと、彼は教えてくれた。

「母は友澤の名を背負うのは重たいとは言ってましたが、嫌っていたわけではありません。自由を尊重する人だっただけです」
「自由ねぇ。やりたいことをやりたいだけだったのでしょう」

 ちくりと、のり子が言うから、樹生はかすかに笑った。やはり、理沙子が結婚しなかったのは彼女のせいだと確信したみたいに。

「七海には優しくしてください。俺が頼み込んで、結婚してもらいましたから。本来なら、もう少しお付き合いを重ねてから結婚するかどうか決めたかったはずです」
< 77 / 80 >

この作品をシェア

pagetop