代理意趣返し。
 ガン、と音を立てて壁に押しつけてやった千葉の身体は、想像より遥かにやわかった。
 胸倉を掴まれて壁に追い詰められた千葉は、息苦しいのか恐怖でも感じているのか、大型の動物に餌に選ばれた小動物じみて見えた。

 また笑ってしまいそうになる。
 そんな顔を晒すぐらいなら、最初から余計な挑発なんてしなければ良かったのに。

 最後だから知りたいと吹っかけてきたわりには、随分と甘い。
 いまさらこいつが知っている元の俺に戻ったところでどうなるものでもない。それならいっそ、最大限の毒を込めてこいつを責めてしまえばいい。

「『奪い取る』? なに被害者ぶってんの」
「な……っ」
「ざまあねえな、千葉? やるならもっと賢くやれっつの、詰め甘すぎ。悪いけど安藤は返さねえから」
「かっ、可奈は俺のだ! あんたがしゃしゃり出てこなかったら……っ」

 泣きそうに顔を歪める千葉は、本当に被害者みたいだ。
 精一杯の虚勢を張っているのが手に取るように伝わってきて、それでも。

 馬鹿な男だ。
 こんなところに俺を呼び出さなかったなら、少なくとも余計なことは知らずに済んだ。聞こうとしなかったなら、余計なプライドを捨てることができていたなら、最後の最後に俺の本性を知る羽目になんてならずに済んだのに。
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