君の隣は、呼吸ができる
前に座っていた人が降りて、窓に私たちの姿がぼんやり映る。
大きな真樹と、小さな私。
(……デコボコ……)
幼稚園の頃までは、同じくらいの身長だったはずなのに。
どんどん離れてしまった。
私たちを映した窓ガラスの向こうに目がいく。
夜の街を流れるネオンが、姪っ子にあげたお姫様のスティックの光と重なって見えた。
その杖が似合いそうな、昼間の綺麗な女の人――
真樹には、ああいう人と並ぶ方がしっくりくると思う。
足元を見ると、真樹の革靴と、私のフラットシューズ。
大きさも全然違う。
自分のぺたんこの靴を見つめる。
クローバー型のビジューが可愛くて、つい買ってしまった。
子どもっぽい自分に悩みながら、昔からこういうのばかり選んでしまう。
真樹は、もうスニーカー以外の靴も履くようになったのに。
結婚する同期も。 同棲する友だちも。
どこかへ引っ越すらしい真樹も。
みんな少しずつ前へ進んでいるのに、私だけ同じ場所にいる気がする。
ふと、昼間に見たショーウィンドウが頭に浮かんだ。
(ヒールの靴を履いたら、見た目も変わるのかな?)
答えは案外、すぐそばにあったのかもしれない。
背の低さはどうにもならないけれど。
見た目なら、いつだって変えられるんだ。
そう思ったら、少しだけ胸が軽くなった。
顔が自然とニヤけてしまう。
「……今、変なこと考えてるだろ?」
突然、真樹の声がしてビクッとなる。
「えっ、起きたの!?」
驚いて隣を見上げると、彼は視線だけをこちらに向けていた。
「ずっと起きてるよ……」
笑いながら「嘘だよ~」と言うと、私を横目で見つめていた真樹の口元が少し緩む。
そして、体をこちらに軽く傾けた。
「……っ」
大きな手が伸びて、やさしく頭を撫でてきた。
「……若葉、どこにも行くなよ」
ほんのわずかに間があって、眠そうな声が続く。
「見えなくなるのは、嫌なんだ……よな……」
ゆっくりと大きな手が離れていく。
真樹は座り直すと、腕を組んでまた目を閉じてしまった。
「え、え……?」
(――今のは、何だったの!?)
私は目を見開いたまま固まった。
大きな真樹と、小さな私。
(……デコボコ……)
幼稚園の頃までは、同じくらいの身長だったはずなのに。
どんどん離れてしまった。
私たちを映した窓ガラスの向こうに目がいく。
夜の街を流れるネオンが、姪っ子にあげたお姫様のスティックの光と重なって見えた。
その杖が似合いそうな、昼間の綺麗な女の人――
真樹には、ああいう人と並ぶ方がしっくりくると思う。
足元を見ると、真樹の革靴と、私のフラットシューズ。
大きさも全然違う。
自分のぺたんこの靴を見つめる。
クローバー型のビジューが可愛くて、つい買ってしまった。
子どもっぽい自分に悩みながら、昔からこういうのばかり選んでしまう。
真樹は、もうスニーカー以外の靴も履くようになったのに。
結婚する同期も。 同棲する友だちも。
どこかへ引っ越すらしい真樹も。
みんな少しずつ前へ進んでいるのに、私だけ同じ場所にいる気がする。
ふと、昼間に見たショーウィンドウが頭に浮かんだ。
(ヒールの靴を履いたら、見た目も変わるのかな?)
答えは案外、すぐそばにあったのかもしれない。
背の低さはどうにもならないけれど。
見た目なら、いつだって変えられるんだ。
そう思ったら、少しだけ胸が軽くなった。
顔が自然とニヤけてしまう。
「……今、変なこと考えてるだろ?」
突然、真樹の声がしてビクッとなる。
「えっ、起きたの!?」
驚いて隣を見上げると、彼は視線だけをこちらに向けていた。
「ずっと起きてるよ……」
笑いながら「嘘だよ~」と言うと、私を横目で見つめていた真樹の口元が少し緩む。
そして、体をこちらに軽く傾けた。
「……っ」
大きな手が伸びて、やさしく頭を撫でてきた。
「……若葉、どこにも行くなよ」
ほんのわずかに間があって、眠そうな声が続く。
「見えなくなるのは、嫌なんだ……よな……」
ゆっくりと大きな手が離れていく。
真樹は座り直すと、腕を組んでまた目を閉じてしまった。
「え、え……?」
(――今のは、何だったの!?)
私は目を見開いたまま固まった。