君の隣は、呼吸ができる


「おかしい、おかしい……」

ブツブツ言いながら、私は頭を抱えていた。

(絶対に変だと思われた!)

恥ずかしさを通り越して、自分に呆れる。

「何であんなこと言ったの、私。うう……」

今まで見たこともない顔に、聞いたこともない真樹の叫び声。
それに、彼と女の人が並んでいる姿が、脳裏に焼き付いて離れない。


何であそこに真樹が、女の人と二人きりだったのだろう。

(ま、まさか……)
(あの人と一緒に住むと言いだしたら……!?)

ここ最近、身近におめでたいニュースが続いている。
真樹も、あり得るかもしれない。

(ど、ど、どうしよう……っ)

デスクに突っ伏して、じたばたと足をバタつかせる。


「おーい、さっきから何やってんの?」

静かな事務所で、隣の席の先輩が呆れたようにこちらを見ている。

会社に戻ってストッキングを替えた後、自分のデスクで気持ちを落ち着けようとした。
そうしたら、今度はなかなか席を立てなくなった。

「なんでもないです……」

顔をカバンに乗せたまま答える。
金具が肌に当たって痛い。


「よーし、終了!」

先輩がノートパソコンを閉じて、思い切り伸びをした。
そして、呆れたように私を見る。

「さすがに遅い。ほら帰るぞー」

カバンを持って席を立つと、顎で出入り口を指した。

「はい……」

私も観念して、潰れたカバンを握りしめた。
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