君の隣は、呼吸ができる

第11話 離れても幼馴染

いつもより、時の流れがゆっくりに感じた。

さすがに家の前まで真樹に運ばれるのは恥ずかしくて、公園の入り口近くで降ろしてもらった。
綺麗に切りそろえられた垣根の葉が、街灯の光を鈍く跳ね返している。

茂みの奥からは、名前の知らない虫の声が小さく響いていた。
それが止むと、恐ろしいほど周囲が静かになって、急に不安になってくる。

さっきまで、真樹の腕の中で安心していたからか。

一人で立っていると、心細い。


「そんなに人の目が気になる?」

ジャケットを受け取りながら、真樹が言う。

「真樹は……嫌じゃないの?」

「何が?」

「私みたいな子どもっぽいのが、いつも隣にいるの」

真樹があからさまに眉を寄せる。

今日は、彼にそんな顔ばかりさせてしまう。

まだ、真樹のぬくもりが体から消えない。
そっと自分の腕を抱きしめる。

「周りから見たら、私たちはデコボコで……」

暑い夏の夜のはずなのに体がわずかに震えていた。

「……お姫様抱っこをしても」
「真樹は王子様じゃなくて、お兄様だよ」

だんだん、自分の声が小さくなった。

「お兄ちゃんと妹、って笑われる……」

言い終えるのと同時に、私は唇を噛みしめた。

「またそれか」

私を見つめていた真樹が、深いため息をついた。

「……あの時の『まさ兄』ってやつ」
「あれ、何なんだよ?」

鋭い視線で私を見下ろす。
こんなに怒りの滲んだ瞳を、今まで見たことがない。

「あんな風に呼ばれるくらいなら」
「いっそ、若葉とは他人でいる方がマシだ」

真樹の声が、低く震えている。

「ごめんなさい……」


私が頭を下げると、真樹はハッとしたように息を呑んだ。

そして、柔らかい口調になった。

「……何で、俺たちが兄妹になるんだよ?」

「だって、みんなそう言ってるよ」

下を向いたまま、小さく答える。

「……若葉は?」

「え?」

思わず顔を上げると、真樹が一歩近付いた。

「若葉は、どう思ってる?」
「俺たちのこと」

まっすぐ見つめられる。
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