君の隣は、呼吸ができる
でも。

触れたのは頭ではなかった。

ゴツゴツした指先が、そっと涙を拭った。

「……っ」

驚いて目を開ける。

すぐ近くに真樹の顔があった。

身を屈めて、まっすぐ私を見ている。


そして。

頬にかかった私の髪を、やさしく耳にかけた。
その指先が少し震えていた。

「若葉は五月生まれで、俺は二月生まれ」
「それで、俺は一人っ子」

(……?)

「兄妹じゃない。――これが、事実だろ」

真樹は小さく笑うと、目を細めた。

「確かに若葉は小さい」
「でも、大人の女性だって俺は知ってる」


それから。
今までで、一番やさしい顔で笑った。

「若葉は綺麗だよ……ずっと前から」

思ってもいなかった言葉に、胸がじわじわと熱くなっていく。

「俺が言うんだから、自信持て」

真樹は微笑んだまま、ゆっくり頷いた。


その瞬間、涙がまた溢れた。

「……うっ、……っ」

まるで、ずっと抱えていたものが流れていくように、涙が何度も頬を伝う。

それが、ほんのり温かくて。
胸の奥へじんわりと広がっていった。
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