君の隣は、呼吸ができる
真樹の顔を見上げると、彼の方から視線を逸らした。

「変われたらいい。……最初は、それだけだった」
「近すぎると何も変わらないから……」

真樹が苦く笑う。

「でも、急に……怖くなった」

(怖い……?)

「若葉が、どっか行きそうで」

「え……?」

真樹が、困ったような顔をして視線を落とす。

彼の目線を追うと、拳がきつく握られていた。

「……これは、俺のためでもあるんだ」

真樹がぽつりと、自分に言い聞かせるように呟いた。

「俺は、多分……誤魔化すのが無理になる……」

喉の奥で押し殺したような、掠れた声。

(どういうこと?)

その意味を知りたくて、私は真樹の言葉を待つ。


真樹は顔を上げて、遠くを見ている。
何か言おうとしては口を閉じた。

そして――
私をじっと見つめる。

「若葉が、大事な幼馴染だと言ってくれて良かった」

そう言うと、ひどくぎこちない笑顔を私に向けた。

(何で、真樹が泣きそうな顔なの……?)

「俺にとっても、若葉は大事な幼馴染だよ」

また、胸がしめ付けられるように苦しくなる。


「離れてもずっと、幼馴染だ」


もう一度、真樹は言った。

その言葉が、胸の奥にゆっくり落ちていく。
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