君の隣は、呼吸ができる
彼が、たくさん悩んできたことだけは伝わってきた。

『俺が知らないところに行くな』

前に、この公園で言われたことを思い出した。
遠くに行くのは真樹の方だと思って、彼の言葉を理解できなかった。

兄妹じゃなくても、家族に見えてしまうくらい一緒にいるから。
私たちの当たり前の形が変わるかもしれないこと、真樹も怖かったんだ。

(それくらい、幼馴染の私を大事に思ってくれていて嬉しい……)


なのに、胸がちくりと痛む。


でも、真樹に辛い顔をさせてしまう方がもっと嫌だ。

――だから、私が言うべきことは分かっている。


「新生活、応援してるね」

スカートの布地をギュッと握りしめる。
指先に力を込めないと、立っていられそうになかった。

視界が滲んで、真樹の姿が歪む。
私は慌てて瞬きをした。
喉の奥にせり上がってくる熱い塊を、無理やり飲み込む。


夜風がさわさわと吹く。
虫の声が、慰めてくれるようにやさしい。

「……大丈夫だからね」

私にできることは、彼を安心させること。

「本当に大丈夫。私たちは変わらないから!」
「話してくれてありがとう……っ」


……ちゃんと、いつものように笑えているだろうか。

私を見つめていた真樹が、深く息を吐いた。
それから、困ったように目を細めて笑った。
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