君の隣は、呼吸ができる
電車に揺られて一時間。
行きは荒行を耐えなければならないけれど、帰りはまだまし。

地元に着く頃にはすっかり空が暗くなっていて、
アスファルトに熱気がこもり、しっとりとした風が吹いている。

静かな住宅街を歩きながら、真樹の大きな背中をぼんやり眺めていると、
幸せそうに笑う同期の顔が浮かぶ。
一緒に社会人になった子が、いつの間にか新しい世界に進んでいく。

結婚が決まった彼女は、同い年とは思えないほど大人びていて綺麗だった。

式で着るドレス選びが大変だと言いながらも、
その表情はどこまでも楽しそうで……。

「……私も結婚したいなぁ」

フラットシューズに当たった小石が、
コロコロ転がっていくのを見つめながら小さな独り言を落とした。

その言葉が、ふわりと夜風に溶けた直後だった。

――ゴンッ!!

鈍い音が響き、私の肩が跳ねた。

「え!?」

慌てて見上げる。

真樹が、電柱に激突していた――



(……嘘でしょ?)

あまりの信じられない光景に、すぐに声を掛けることもできない。

時間が止まったような静寂の中で、私の目だけがパチパチと瞬きを繰り返した。
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