君の隣は、呼吸ができる

第3話 俺が知らないところに行くな

「あ~、腫れちゃってる。……これでよし!」

「……ありがと……」

近くの公園のベンチに真樹を座らせて、
今朝買った冷却シートをおでこに貼ってあげた。

彼は、むすっと照れくさそうな顔。

しっかり者の彼が、うっかり電柱にぶつかるなんて。
普段なら絶対見られないような姿が面白くて、ニヤニヤが止まらない。

「笑うな」と言いたげに睨まれるけれど、
今の私は真樹を見下ろす位置にいる。

「わーい。私の方が高い!」

視界が逆転したのがなんだか嬉しくて、
私はここぞとばかりに彼の髪をクシャクシャと撫で回した。
指先に触れる髪の感触が、思ったよりも柔らかくてくすぐったい。

「はいはい、よかったデスネ」

真樹は不満そうに上目遣いで私を見ながらも、
大人しくされるがままになっている。

「よしよし。痛いの痛いの飛んで……い……け?」

不意に、手首を掴まれた。

「……」

無言のまま、真剣な顔で見つめられる。

「……え」

さっきまでと違う、吸い込まれそうな強い目。
私の方が高くなったはずの視線が、いつの間にか同じ高さになっていた。

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