君の隣は、呼吸ができる


街灯が一つずつ灯り始める。
昼間の熱を残した風が、公園をゆっくり通り抜けていった。

私の隣に座った真樹は、新しい部屋のことを話してくれる。

実家よりもだいぶ会社に近いこと。
家具がそろっていないこと。
カーテンを付けたら、急に一人暮らしっぽくなったこと。

今年の春から物件を探し続けて、ようやく決まったことも。


かなり前から、私の通勤が楽になるようにって考えてくれていたんだ。

話を聞きながら、私は時々、隣の横顔を盗み見た。
前に、『もう少しの辛抱だから』と、言っていた真樹を思い出す。

(あの時、ちゃんと話を聞けば良かった)

彼のやさしさに気付けなくて悔しい。
はにかむように笑う姿に、胸が熱くなっていく。


――引っ越しの話が終わると、会話が途切れてしまった。

虫の音が、静かにやさしく響く。
二人きりの公園は、時間が止まっているように感じた。

このまま、ずっと一緒にいたい。

でも。
今、自分の気持ちを話さないと、私たちの時間まで止まったままになる気がした。
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