君の隣は、呼吸ができる
やさしくて、でも逃げられない強さで抱きしめられる。

「ま、真樹……っ」

私の肩に、真樹のおでこがふわりと触れる。
熱い体温と、苦しそうに乱れた呼吸が服越しに伝わってきた。

「他の男と手を繋いで……」
「急に、綺麗になろうとする」

低い声が、耳元で響く。
私の服を掴む指先が、小刻みに震えている。

「俺のことを、幼馴染だって言い切る……」

「……っ」 

抱きしめる腕に、さらに力がこもる。

「俺といると首が辛そうなのに、他の男とは自然に笑えて……」

真樹が小さく息を漏らす。
笑っているはずなのに、その声は今にも泣きそうだった。

「俺じゃない男と仲良くして」
「結婚したいなんて急に言い出す……」

チッと、短く鳴いて、セミが飛び立った。

――真樹の言葉が詰まる。

「……隣の幼馴染じゃ、嫌なんだ……」

(……え?)

言葉の意味が、すぐには頭に入ってこない。

遅れて胸の奥へ落ちた瞬間、また涙が溢れてきた。

「俺を、男として見てほしいのに」

真樹は苦しそうに眉を寄せて、小さく息を吐いた。

「すっげぇキツかったよ……」


(……私だけじゃ、なかったんだ……)

驚きと、切なさ。
それ以上の大きな喜びが、胸の奥からせり上がってくる。

私の目から、涙が零れ落ちた。
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