君の隣は、呼吸ができる
今までは、隣のお家の真樹のお父さんとお母さんだった。

それなのに。

(彼氏……のお父さんとお母さん)

その瞬間、頭の中にとんでもない言葉が浮かぶ。

(……おおお義父さんと、おおお義母さんっ!?)

「っ!」

思わず叫びたくなってしまい、慌てて両手で口を押さえる。

まだ恋人になったばかりなのに、何を考えているのだろう。

みるみる耳まで熱くなっていく。
助手席に座った直後、エアコンの冷気を感じる間もなく顔の温度がさらに上がってしまう。

「……すごいこと考えてるだろ?」

運転席へ乗り込んだ真樹が、呆れたように笑った。

「えっ!?」

「全部顔に出てる」

「えええっ!? け、結婚の話までは考えてないよ!?」

「……え、結婚?」

シートベルトをつけている真樹が、一瞬止まって目を丸くした。

(ひゃあ! 余計なこと言っちゃった!?)

赤面しながら首を振る私を見て、真樹は可笑しそうに肩を揺らしていた。

エンジンの静かにうなる振動が、シートを通じて体に伝わってくる。
外のセミの鳴き声が遠くになった。

よく知っている柔軟剤の香りが、ふわりと静かに漂って鼻をくすぐる。
彼の隣は安心するけれど、密室に二人きりと思うと照れてしまう。
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