君の隣は、呼吸ができる
――車で三十分ほど走ったところで、目的地に到着した。

真樹の新居は、白とグレーを基調にしたマンション。
整えられた植栽と大きな窓ガラスが並ぶ、洗練された外観だった。

(わあ……オシャレだぁ)

私が興奮気味にキョロキョロ見回している横で、真樹は慣れたように案内してくれる。
エレベーターに乗って二階の角部屋に着くと、ポケットから鍵を取り出す。

「あ!」

鍵に付いている、葉っぱを抱えたハムスターのキーホルダーに目がとまる。
ハムスターのマスコットがくるりと回って、思わず笑ってしまう。

(嬉しい……)

真樹は、私の視線に気付いて照れくさそうな顔をした。


ドアを開けると、新しい建材の乾いた匂いと、清掃したてのような爽やかな香りがふわりと鼻をくすぐる。
外のむわっとした熱気とは違い、部屋の中は静かな空気だった。

大きな窓から差し込む夏の光が、真っ白な壁とつやつやのフローリングを明るく照らす。

「わー! 広いね!」

「家具がそろってないから、余計広く見えるよな」

私が声を弾ませていたら、小さく笑う声が後ろから聞こえる。

ドアが閉まる音と同時に、背中から腕が伸びてふわりと抱きしめられた。

「はあ……やっと、若葉と二人きり」

「え、えっ!?」

途端に心臓が跳ね上がった。

真樹の長い腕が私を包み込んで、大きな手が私の肩を撫でる。

「運転中は抱きしめられないし。
親の車の中で、さすがにこんなこと出来ないよな」

頭のすぐ上から落ちてくる、苦笑交じりの低い声。
背中に感じる、しっかりとした胸板と熱い体温。

(ひゃあああ……っ!)

私は思わずギュッと目をつぶった。
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