君の隣は、呼吸ができる
エアコンの業者さんが来て、リビングと寝室の取り付け作業が始まった。

業者さんの対応をしている間、好きに整理していいと真樹に言われたから、私はキッチンへ移動した。

食器棚と小さな炊飯器以外は届いていないキッチンも、今は広々として見える。

床に置いてある段ボールから、調理器具を取り出した。
どれもまだ、タグ付きや袋入りの新品ばかり。

真樹の新生活、少しでも楽に始められるようにしたい。
シンクの前に立つと、一つずつ包装を外していく。
おろし立ての緑色のスポンジに洗剤を付けて、洗っておくことにした。


ここで、真樹が暮らしていく。

朝を迎えて、夜を過ごして、自分で料理して。
休日にはフットサルをして、時々は、のんびりして。

そんな未来を想像すると、不思議なくらい胸が温かくなった。


リビングからは、工事の音と話し声が聞こえてくる。

(真樹って、ちゃんと社会人なんだなぁ)

私や友だちといるときと、話し方が全然違う。
丁寧な言葉で会話をする彼の声は、ずいぶんと大人びていた。

一人暮らしを始められるくらい自立している真樹は、やっぱり私よりずっと前を進んでいると思う。

そんな彼に、私はすぐに追いつけない。
だから、今できることだけは頑張りたい。

あわあわになったスポンジを見つめながら、そんなことを思った。
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