君の隣は、呼吸ができる
「あれ……?」

気付けば、フライパンやお鍋、ボウルやザルばかり。
段ボールの底から菜箸だけ見つけたけれど、他の調理器具が見当たらない。
食器棚を開けてみても、まだ空っぽだった。

(真樹って、料理できるのかな?)

彼のお母さんは昔から料理が得意で、よくうちもお裾分けをしてもらったりしている。
だから、真樹が料理をするイメージが無い。

ちょうど、彼が私の様子を見にきた。

「ねえ、真樹。お玉とかは土曜日に持ってくるの?」

「それって必要? コップじゃダメなの?」

「えっ!?」

コップをお玉代わりにしようとしていることに驚く。

真樹が不思議そうな顔で首を傾げている。

「じゃあ、フライ返しは?」

「これだろ?」

彼が私の横から、白い調理器具をひょいとつまみ上げた。

「そ、それは、しゃもじだよっ!!」

「……え?」

真樹が眉をひそめる。

(う、嘘でしょおお!?)

その瞬間、さっきのインターホンの音が、何故か頭の中で響いた気がした。


エアコン業者さんとのやり取りで大人っぽいと思ったのに。
一人暮らしも、ちゃんとやっていくんだろうなと思ったばかりなのに。

やっぱり、真樹は料理に興味が無いみたい。

(大丈夫なのかな……)

途端に、彼の新生活が心配になってしまった。
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