君の隣は、呼吸ができる
「これって……」

真樹の就職祝いに渡した、大きな鍵を抱えたハムスターのぬいぐるみ。
テーマパークの限定品だったものだ。

あの時は、『俺、もう22だよ?』って、笑っていたけれど。
こんなふうに、ずっと大事にしてくれていたなんて思わなかった。

じわじわと、視界が滲んでくる。

昨日の彼は、社会人になって再会した時から、私を幼馴染として見ていなかったと言っていた。
真樹が嘘をつくなんて思ってないけれど、少しだけ信じられなかった。
だって、私は子どもっぽくて、女の人としての魅力があるとは思えないから。

でも。この段ボールは、今日新しく持ってきたものじゃない。

すれ違っていた時も、真樹は私を大切に想ってくれていたんだと、箱の中身が教えてくれているようだった。

私は、いつから真樹を好きだったのだろう。
思い返そうとしても、もう分からないけれど。
ずっと、特別だったのは確か。

好きという気持ちにちゃんと気付けて、本当に良かった。

「……ありがとう」

ぽつりと呟いて、ギュッとぬいぐるみを抱きしめた。
ふわふわで柔らかくて、新しい部屋の中でこれだけは好きな匂いがする。

胸の奥がじんわりと熱くなった。
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