君の隣は、呼吸ができる
「……ごめんって、若葉。怒るなよ」

申し訳なさそうな声と共に、真樹の方から近寄ってきた。

ゴツゴツした手で私の顎をそっと持ち上げると、大きな影が落ちてくる。
次の瞬間、おでこに柔らかなものが触れた。

「……っ!」

彼は身を屈めて、固まっている私の頬を指先で撫でる。

「俺たちの身長差だと、これが限界だな」

そう言って身を起こした真樹が、恥ずかしそうに笑った。

「う、うん……そうだよね」


おでこに残る柔らかな感触が、じわじわと熱を持って広がっていく。
さっきの二人のキスを見てしまったときより、心臓がうるさくて頬が熱い。


ちょうど歩行者用の信号が青に切り替わった。
周りの人たちが一斉に歩き始めると同時に、真樹が私の手を包み込む。

すっかりいつもの私たちに戻って、笑い合いながら並んで歩き出す。


日が落ちて、少しだけ夜風が涼しくなってきた。

繋いだ指先に、ぐっと力が込められたのが分かる。
じんわりと温かくて、お互いの熱がゆっくり混ざり合っていくような気がした。
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