Honey Melty
チン、と到着を知らせる音が鳴り、エレベーターを降りて私は右、咲間さんは左へ。同じ階なのにずっと一緒にいられないなんて寂しすぎる。
「じゃあ私はこれで」
別れを惜しみながら回れ右をし、とぼとぼと歩いていると「あー、真鳥、ちょい待ち」と引き止められてしまった。
「?どうかしましたか」
立ち止まり振り返ると自分の部署に向かっていたはずの咲間さんがこちらへと歩いてきた。殺風景な廊下がまるでパリコレのランウェイだと錯覚してしまうのはこの人がモデル並みにスタイルが良くてかっこいいからだ。
目の前に立つ咲間さんの綺麗な顔が私を見下ろしている。ずっと見ていられるなぁ。歩く彫刻じゃん。前世でどんな徳を積んだらそんな綺麗な顔で生まれてこれるの?
「まつ毛ついてる」
「えっ、うそ、」
「取っていい?」
「え、あ、自分で取りますよ」
「自分じゃ取れないとこについてる」
「どこですか」
鞄の中からコンパクト鏡を出そうとすれば頬に手が添えられる。「ここだよ」って持ち上げられて親指の腹で瞼を少し撫でた。瞼についてんの?やだ、なにそれ恥ずかしい。
「目、腫れてる。泣いた?」