月影の彼方〜千年の約束〜
第十八話 夏の終わり
結局、夏休みの間は月島家で過ごした。
晴人が帰省していると聞きつけて、家を管理してくれていた親戚夫婦がBBQを開いてくれたりもした。
「たくさん食べてね」
「この家も、晴人君が帰ってきてくれて喜んでいるよ」
そんなことを言われて、少し照れくさかった。
また別の日には、晃が実家から持ってきたテレビゲームで三人で対戦もした。
「なんでオセロは弱いのにテレビゲームは強いんだよ」
「センスだ、センス」
「絶対違うだろ」
そんなくだらないことで笑った。
あっという間の夏休みだった。
「明日で夏休みも終わりかぁ」
縁側でコーラを飲みながら、晃がつまらなそうに言った。
リッカは桜の木の上で昼寝をしている。
風が吹くたびに、銀色の髪が揺れていた。
「最近リッカ、よく寝るよな」
「……そうだな」
晃が桜の木を見上げる。
けれどすぐに視線を逸らした。
「疲れてるんだろ。人間の歳で言ったらもうよぼよぼのおじいちゃんだし」
「なんだそれ」
晴人が笑う。
晃もつられて笑った。
夏の終わりの風が吹く。
「しかし、花火大会の時はまさか本物の天狗に会えるとはな」
晃が空を見上げる。
「夏一番の思い出になったわ」
「な。迫力すごかったよな」
「あのリッカが緊張してたもんな」
ふ、と二人で笑い合う。
明日で夏休みが終わる。
こんなに楽しい夏休みは初めてだった。
終わってほしくない。
だけど。
この夏で少しだけ大人になれた気もしていた。
今まで、自分は人とは違うのだと思っていた。
みんなとは違う場所にいるのだと。
けれど。
線を引いていたのは、自分の方だったのかもしれない。
新学期になったら、自分から誰かに話しかけてみようか。
そんなことを考えている自分が、少しだけ可笑しかった。
「冬休みもまたここに泊まろうぜ!」
晃が勢いよく立ち上がる。
「鍋パとかいいよな!」
「いいな。コタツあったかな」
「また探検するか」
「お前、そればっかだな」
二人で笑い合う。
もしあの時。
リッカの異変にもっと早く気付けていたら。
もっとちゃんと、色々な話ができたのかもしれない。
今までのこととか。
これからのこととか。
でも、この時の俺はまだ知らなかった。
きっと夏が過ぎて。
秋が来て。
冬になっても。
寒いな、って言いながら三人でコタツに入って。
鍋を囲んで。
くだらないことで笑い合って。
そんな時間が、これからもずっと続いていくのだと思っていた。
そんな未来が待っていると、
信じていたんだ。