追放された自称悪役令嬢は落ちぶれた元騎士を拾って辺境に返り咲く
普通なら腹を立てる場面だと思う。

けれど彼は怒らない。

むしろ、少し楽しそうですらあった。

男が上半身を起こそうとした瞬間、顔をしかめた。

右腕を押さえている。

激しい痛みが走ったらしい。

「無理しないことね」

「……そうしたいんだが」

男は自嘲気味に笑った。

その笑顔にはどこか諦めが混じっていた。

私は自然と尋ねる。

「貴方は何者?」

少しの沈黙が降りた。

暖炉の火が揺れる。

やがて男は静かに答えた。

「ただの元騎士だ」

その言葉はなぜか、妙に重かった。

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