乾杯はふたりだけの秘密
「結衣ちゃんは正月休み実家帰んの?」
「うーん……」
まさやんに聞かれて、思わず返事を濁した。
「何かさぁ、実家に帰ってものんびり出来ないっていうか、親とか親戚がいちいち干渉してくるから疲れるんだよね」
「わかるわかる、俺もそうだもん。口を開けば『結婚はまだか』って」
「そう!」
「心配してくれてるのはわかるけど、タイミングとかいろんな問題もあるし、正直放っておいてほしいんだよな」
まさやんは眉をひそめて苦笑いを浮かべた。そう言いたくなる気持ちが痛いほどわかってしまう。まさやんの彼女はバツイチ子持ちの年上だ。
「私の場合は彼氏と別れちゃってるし、今行くと危険でしょ?」
「そりゃ絶対マズイよ。今回はパスだな。……新田はどうすんの?」
――ナイスまさやん!
心の中で呟いて、耳を傾ける。
「俺は家でのんびり過ごす予定です」
そう返事しながらまさやんに向けていた視線が、不意にこちらを向いた。その目が「暇ですよ」とでも言いたげに見えて胸がそわそわし、結衣はさりげなく視線をそらした。
デートに誘っていいものか、誘われるのを待つべきか、と考えてしまう。ここ数年、恋愛相談はまさやんとなかじーにしていたけれど、今回に限ってはそうもいかない。
「じゃあ、暇を持て余してるもん同士で初詣でも行ってきたら?」
まさやんの表情には、からかいの色が滲んでいる。
「いいですね。先輩、一緒に初詣行きましょうか」
賢吾が真に受けているような笑顔を向けてくる。
「え。ああ、うん。別にいいけど」
気まずさから、つい歯切れの悪い返事をしてしまった。昨日はまた誘ってもいいかと聞かれ「もちろん」と笑顔で返したのに。
もしかすると、意識し過ぎているのは自分だけで、賢吾は何気ない会話の中で軽く誘っているだけなのかもしれない。けれどその流れで、彼が忘年会の後のことやイヴとクリスマスを一緒に過ごしたことを口にすることはなかった。
「なんだかんだで、ふたりって結構お似合いだと思うんだけどなあ」
今度はまさやんの素の表情を目にして、それはそれで、反応に困ってしまう。
――なんだかんだって何?
「俺が良くても、黒見先輩がどうか……」
賢吾が子猫のような眼差しを向けてくる。それは、昨日聞きたかった言葉だ。今この状況で返事なんてできるわけがない。
「休み明け、いい報告待ってるから」
にやりと笑いながらまさやんが肩を叩く。
冗談にしてはタイミングが絶妙すぎる。もしかしてふたりはグルだろうか、と感じるほどの流れるような連携プレーだった。
まさやんのノリはスキップするみたいに軽くて、いつも真面目な空気にくすぐりを入れてくる。けれど、誰よりも情に厚いという面もあわせ持っていて侮れない。
まさやんの、にやりトリックにかかってしまった。
「うーん……」
まさやんに聞かれて、思わず返事を濁した。
「何かさぁ、実家に帰ってものんびり出来ないっていうか、親とか親戚がいちいち干渉してくるから疲れるんだよね」
「わかるわかる、俺もそうだもん。口を開けば『結婚はまだか』って」
「そう!」
「心配してくれてるのはわかるけど、タイミングとかいろんな問題もあるし、正直放っておいてほしいんだよな」
まさやんは眉をひそめて苦笑いを浮かべた。そう言いたくなる気持ちが痛いほどわかってしまう。まさやんの彼女はバツイチ子持ちの年上だ。
「私の場合は彼氏と別れちゃってるし、今行くと危険でしょ?」
「そりゃ絶対マズイよ。今回はパスだな。……新田はどうすんの?」
――ナイスまさやん!
心の中で呟いて、耳を傾ける。
「俺は家でのんびり過ごす予定です」
そう返事しながらまさやんに向けていた視線が、不意にこちらを向いた。その目が「暇ですよ」とでも言いたげに見えて胸がそわそわし、結衣はさりげなく視線をそらした。
デートに誘っていいものか、誘われるのを待つべきか、と考えてしまう。ここ数年、恋愛相談はまさやんとなかじーにしていたけれど、今回に限ってはそうもいかない。
「じゃあ、暇を持て余してるもん同士で初詣でも行ってきたら?」
まさやんの表情には、からかいの色が滲んでいる。
「いいですね。先輩、一緒に初詣行きましょうか」
賢吾が真に受けているような笑顔を向けてくる。
「え。ああ、うん。別にいいけど」
気まずさから、つい歯切れの悪い返事をしてしまった。昨日はまた誘ってもいいかと聞かれ「もちろん」と笑顔で返したのに。
もしかすると、意識し過ぎているのは自分だけで、賢吾は何気ない会話の中で軽く誘っているだけなのかもしれない。けれどその流れで、彼が忘年会の後のことやイヴとクリスマスを一緒に過ごしたことを口にすることはなかった。
「なんだかんだで、ふたりって結構お似合いだと思うんだけどなあ」
今度はまさやんの素の表情を目にして、それはそれで、反応に困ってしまう。
――なんだかんだって何?
「俺が良くても、黒見先輩がどうか……」
賢吾が子猫のような眼差しを向けてくる。それは、昨日聞きたかった言葉だ。今この状況で返事なんてできるわけがない。
「休み明け、いい報告待ってるから」
にやりと笑いながらまさやんが肩を叩く。
冗談にしてはタイミングが絶妙すぎる。もしかしてふたりはグルだろうか、と感じるほどの流れるような連携プレーだった。
まさやんのノリはスキップするみたいに軽くて、いつも真面目な空気にくすぐりを入れてくる。けれど、誰よりも情に厚いという面もあわせ持っていて侮れない。
まさやんの、にやりトリックにかかってしまった。