~KissHug~

~35~

月夜は明るかった。

「だからさ、最初はぷーちゃんに会った時
運命だって思ったんだ。」

芳樹が優しく髪を撫ぜる。


「重ねてるわけじゃなくて、
雅恵さんの優しさを思い出したんだ。
かあさんと雅恵さんの間に何かあったのは
子供心に理解してた。
雅恵さんにつぐないたいと
思っていたから
俺は、愛してる人の
すべて受け入れる
試練があってもいいんじゃないかなって。」


私の顎を上に向けた。

「今はぷーちゃんだけ見てる。
言ったよね、俺を利用していいって・・・
ぷーちゃんの全てを受け入れる。
ぷーちゃんに好きな人がいることも
俺は二番めなことも・・・・」


「だから、私はずるい女になる。
好きな人に抱きしめられたら
KissしてHugするよ。
今の芳樹に抱きしめられても
同じことする。
汚い女でしょ……」


「そいつに嫉妬して
さらにぷーちゃんを愛してるって実感する。
俺ってMかも。」
そう言ってほほ笑んだ。


「好きな人にもう会わないって言われた…
でもね、会いたい…
心が痛くて痛くて死にそうだったの
芳樹が来てくれて
救われた・・・・
利用してる私はサイテーだけど
心の痛みが半分になった。」


「目も腫れてる……
ずいぶん泣いたんだな……」


そう言って瞼にキスしてくれた。


もうあふれ出す愛しさは止められなかった。


「歩来って呼んで…
これから歩来って呼んで…」

「いいの?えらそーだよ。」

「芳樹にそう呼ばれたい。
私をあの人から奪って…
あの人を愛してる心を全部
芳樹に変えてほしい……」

その言葉が
芳樹にとって残酷な言葉とわかってるのに
私は芳樹の優しさにすがる


痛みを半分持って行ってと
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