~KissHug~
「あれ?ハンコどこだったかな。」

引き出しを開けている。

  また、ちらかしたな…
  FAXの下の引き出しなのに…



「ここじゃないの?」

一瞬、耳を疑った。

「ほら、これでしょ?
寝ぼけてるから訳わからなくなるのよ。」

背筋がザーーーーと一瞬にして氷つく



「サンキューさすが、千鶴さん!!」

そう言って、ハンコを片手に
出てきた芳樹を

私は、顔をあげて見据えた。



芳樹の顔は青ざめた。

私はそんな芳樹を少し冷静に見ていた。



二人の間に緊張の時間が流れた。


「芳樹~帰ったの?
もうバイト行く時間だから
もう一回しよ~」

千鶴の甘い声が響いた。

相手が千鶴ということに腹が立った。

  素良の恋がやっと叶ったのに


私は、何も言えず玄関を閉めた。
雷が鳴った。
傘を玄関に置いてきた。
でももうもどる勇気はなかった。


雨の中飛び出した。
泣きながら
私は、追いかけてこない芳樹に失望した。



雷は私の頭上で鳴り響く


携帯は素良を呼んだ。


「もしもし・・・・」


「素良!!助けて!!」


雷が轟音を立てる。
私は素良の家の前に立っていた。
< 192 / 451 >

この作品をシェア

pagetop