~KissHug~
「私と千鶴さんは
素良と芳樹に踊らされてるってわけ?」

「あいつの心はわからない。
ただ、俺は今まで見ないようにしてきた
嫉妬というあいつのしかけてきた罠に
面白く堕ちてしまったってことかな。」


「芳樹、そんなに悪い人とは
思えないんだけど……」


「お人よしだな。
さっきのショックはどこへやら?
結局、おまえも芳樹に支配されたってこと。」



心臓がドキーーンと音をたてた


  それは、芳樹のことも愛してるってこと


「俺さ、小さい頃
まだかあさんが生きていた頃
少しさびしい思いをしたんだ。
今まで俺しかみてなかったかあさんが
夕方俺に一人で
ご飯を食べさせる日が多くなった。
親父は、単身赴任だったから
俺はかあさんが帰ってくるまで
一人で待ってた。
本を読んでると余計なこと考えないだろ?
今考えると
かあさんは、男に会いに行ってたんだと
思うんだ。
親父が浮気ばっかしてるから
今思えばやり返したんだと
思うけど、
そんなことわかんないから
傷ついた。
見えないかあさんをしばりつけるものに
嫉妬したんだ。」



「かわいそうに……」


「かあさんのやわらかい身体に
抱きしめられても
悲しかった。
俺だけのかあさんじゃないような
気がして……
少しそんなこともあって
反抗的になった時期に
かあさんは自殺したから
自分にも原因があったんじゃないかって
ずっと思ってきた。」


素良の目がみるみるうちに
潤んできた。

「うわーーかっこわりー」
素良が慌てて目を拭いた。


でも涙はポロポロ
ダイヤモンドみたいに
落ちてくる。


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