~KissHug~
小樽行きの快速に乗った。

少しづつ人がいなくなった汽車の中で
私たちは自然に
手を取り合った。


無言で荒れる薄暗い白い海を
通路の出口の窓から
眺めていた。


この海は帰りには真っ暗になっている

一緒に見る最後の風景になるかも
知れないと思った。


小樽で汽車を下りた時
私たちは普通の恋人同士になっていた。


「小樽は、よく来るんだ。
俺、大好きでさ。観光客になって。
ただ、冬はあんまりこないけど。」


ひんやりとした空気に
思わず寒いと言って
寄り添った。

私は静かに携帯の電源をおとした。

今だけは自分の心に正直に生きたい。
後悔したくない。
明日は、いつもの
芳樹の私に戻るから・・・・


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