~KissHug~
帰り道
携帯が鳴った。


「どこにいる?」

芳樹が語気を荒げていた。

「本屋。」

「素良もいない、一緒か?」


「一緒よ。」

「どこの?」

「言いたくない、今日は会いたくない。」

「どこよ!?」

「あんた、頭変だから。
さきにしかけたのはあんたでしょう?
そんなひどい男とはもう会いたくない。」

電話を切った。
そして電源を落とした。


素良は、きっと居留守をつかった。


そうして欲しいと私が言った。
今会うと
この耳の赤さが
犯人は素良だと
芳樹につげてしまうから


そしたら、素良とこの関係を続けることが
難しくなる。




私は素良を失いたくない
どんな形でも
素良を感じていたいから



それが、切なくても
悲しくても


素良を静かに愛したい


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