~KissHug~
「冷たくなんかないよ。
こんなに想ってるのにわかってもらえない。
よっぽど、印象悪いんだ、俺…」


私は、急に腹が立ってきて
体を離し
抗議した。

「だって、千鶴さん
何度も素良に泣きついていた
芳樹が浮気したって…
印象悪くもなるでしょ~」

「浮気?バカだな~
たしかに軽薄だったりするし
こんなんだったりするから
そう思われるのかもしれないけど
俺と素良の間で揺れているのは
千鶴だよ。
他の子と遊びにいったりはしたけど
それを浮気に結びつけて
素良に泣きつくの、あいつは・・・。」


私の頭は混乱した。

「え?それじゃ…」

「そ、あいつは、素良が好きなんだ。
気がついてくれない素良を振り向かせるために
必死だったりする。
最初は、気がつかなかったけれど
最近やっとわかった。
あいつ自身、素良の存在をわかってるのかは
謎なんだけれど~
だから、俺はかわいそうなやつなんだ。」



  千鶴は、素良が好きなの?
  両想いじゃない・・・

  私と芳樹は
  ただ、振り回されているだけ?


なんだかバカバカしくなってきた。



「千鶴は、深いんだな・・・
たぶん、自分もわからないから
たちが悪い。
付き合う方もたいへんさ。」


「でもあなたのことは?」

「それは、それでほんと。
要するに、あいつにとって今までの形が
ベストなんだ。
俺がいて、素良がいる。
俺のことも好き
素良のことも好き
どっちも失いたくないとすれば
軽薄な俺と一緒にいて
硬派な素良に甘えられる…
どっちか、ひとつかけてもダメなわけさ。」


「いやな人ね……」


むかついてきた。


私がこんなに切ない想いをしてるのに
千鶴は、卑怯だと思った。
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