~KissHug~
素良が、どれだけ切なく千鶴を想ってきたか…
千鶴は知らない。

知らなくていい
そんなずるいやつは…


でも、素良が千鶴を想う気持ちは
私が、素良を想う気持ちと一緒…

芳樹は
大人だから、そんな千鶴を
受け入れてきた。
芳樹も切ない恋をしてるんだと


芳樹と私も同じ。

好きな人に本当の気持ちを隠されて
抱きしめ合う。
愛してるから
その人のいいように
動くしかできない……
全部わかっていても
愛する人の幸せを願ってしまう。


私は、芳樹の頬を手で包んだ。


芳樹はまさかの展開に驚いている。


「あなたも辛かったのね。
可哀そうだったんだ。
ごめんね…何も知らないから
ひどいこと言って。」

そう言って
抱きしめた。


大きな芳樹が小さく感じる。

素良の時と同じ……

「ぷーちゃんが俺を救ってくれると思った。
だから、思いきって
千鶴と別れたんだ。
だけど、軽薄な俺で、いきたかった。
俺のスタイルは変えたくない。
本当の俺は弱いからさ
誰にも見せたくないんだ。」


自分を見てるようだった。


芳樹に対してはっていたバリアが
崩れ落ちた。


「本当の私もかなりの闇だよ。
芳樹だけを今は、愛せるかわからない。
結局千鶴と同じかもしれない。
だから、友達でいよう。」

強い風が二人の間を吹き抜けた。


「私もこのままだったら
あなたともう一人の人の間で揺れ動くわ。
もう、あなたに可哀そうな思いは
させられないから
あなたのしていた恋を
私もしてる。
だから…」


頬を包んでいた手首を
芳樹が優しく包んだ。
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