あなたの可愛いおへそのくぼみ
 宥仁は有言実行の人だったようだ。彼は元いた会社に辞表を出し、仕事の引き継ぎを終え、転職も成功させて末莉のもとに戻って来た。この間なんと告白から3ヶ月のことだった。
 転職先は地元でも大きな会社だった。福利厚生もしっかりしており、前のようにずっと休めないということも無さそうだった。さすが宥仁と言うべきか。

「本当に戻って来るなんて。この短期間ですごすぎるよユージン……」
「まあ会社を辞めることはずっと考えてたから」
「そうだったの?」
「ああ。でもなかなか決心がつかなかった。苦労して入った会社だったし」

 帰郷にあたり、宥仁は退院して元気になった父親にこんこんと諭された。自身が学歴で苦労したので、息子には良い大学を出て、大企業に勤めて欲しかったらしい。
 だがもう決めたことだと、宥仁は意思を曲げることは無かった。実家に戻ればという母親の申し出も断り、会社の近くにマンションを借りて住んでいる。

「いいかげん自立しようと思って」
「本当に偉いよ。私なんて就職のとき実家出る発想すらなかったもん。薄給なのもあるけどね」

 末莉は今、宥仁の借りたマンションに招かれている。告白の返事を聞かせて欲しいと言われて、心を決めてやって来た。

「本当に良いの?ユージン。私みたいな変態で」
「その言葉……こないだのをかなり根に持ってるな。
 あのさ、父さんが倒れたって聞いて帰ってきた日。駅で新幹線降りて電車に乗り換えるとき、広告が目に入ったんだよ」
「ん?駅の広告?」
「そう。乗り換え口の横に大きくあるやつ。赤い金魚のモチーフの」
「え!それって私の作ったデザインだよ!?」
「うん。すぐに分かった」

 駅にあったのは、勤めているデザイン事務所が自治体から依頼され、末莉が主となって手がけた広告だった。観光客に向けて地元の魅力をアピールするもので、何かインパクトのあるものを……と考えに考えて末莉が採用したものだ。大きな仕事で時間もかかり、かなり頑張った思い出深いものだった。

「あれ見たとき、なんだか末莉が出迎えてくれた気がして。父さんのことが不安だったけど、なんか一気に安心したというか……」
「そう……」
「それから末莉に会いたくて仕方なくなった」
「そうだったんだ……。ありがとう、私のこと思い出してくれて」

 自分の気持ちも、頑張った仕事も、宥仁がすべて認めてくれたように思えた。末莉の胸にじんわりと暖かい感情がこみ上げる。
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