あなたの可愛いおへそのくぼみ
宥仁の父親の手術は、その週の水曜に行われた。
「無事に終わった」と宥仁からメッセージをもらい、末莉はほっと息をつく。宥仁の顔が見たいと思ったが、当日はさすがに忙しいだろうとやめておいた。
翌日、末莉は仕事から帰ってきたさい、宥仁の部屋に灯りがついているのに気がついた。
(どうしてるかな。ユージン)
末莉が様子を訪ねるメッセージを送ると、返信がすぐに来た。
『母さんいま病院行ってて誰もいなし、俺の部屋に来たら?』
誰もいないと逆に問題なのでは……とふと思うも、勝手知ったる幼馴染みの家だ。末莉は少しためらうも、玄関を開けてもらって一緒に宥仁の部屋に入った。
「わあ、なんだか懐かしいね」
「だろ?こないだの俺も同じ気持ちだったよ」
宥仁の部屋に入るのは13年ぶりだ。末莉の部屋ではゲーム、宥仁の部屋ではマンガを読むと小学生の行動は決まっていた。
彼は家の方針でゲーム機を買ってもらえなかった。それもあり、ゆるい末莉の家によく出入りしていたのだろうと思っている。
末莉は部屋の本棚をしげしげと眺める。さすがに小学生時代のマンガは置いていなかったが、宥仁の好きそうな本がたくさん収められている。末莉の知らない、高校生までの宥仁の趣味が垣間見えた。
「座れば?」
「あ、うん」
部屋にはソファなどない。末莉はベッドに座る宥仁の隣に腰をおろした。大人になって並んでベッドに座っているなんて、なんだか落ち着かない。そわそわする気持ちを紛らせようと宥仁にふたたび話を向けた。
「おじさんの容態は?」
「落ち着いてる。手術もうまくいったし、一安心できそうだよ」
「そうなの!良かったね!」
末莉は宥仁の父親の顔を思い浮かべる。最後に会ったのはひと月ほど前か。玄関先で出かけるときに挨拶していた。
宥仁の父親はロマンスグレーのイケオジだ。末莉にはいつもにこやかに話しかけてくれるが、一人息子の宥仁には厳しかったと聞いている。
「父さんもさ、なんか年取ったなって思った。小さくなったっていうか」
「ユージンが大きくなったからね」
「そりゃまあ、そうだけど。病気もあって昔みたいな覇気が無くなった感じがしたよ」
自分にとって絶対的だった父親の変化に、宥仁にも思うところがあったようだ。
「父さんは厳しかったけど、俺なりに尊敬してた。大学とかも父さんの希望してたとこに入って、これで良いと思ってたんだけど」
「うん」
「最近思うんだよ。これからは自分の人生、自分で考えて、決めて生きていかないとって。後悔するのはもう嫌だから」
「そっか……」
宥仁は何を後悔したのだろう。それを今聞くのは違う気がして、末莉はじっと彼の顔を見ていた。
「ふー……」
宥仁が深く息を吐き、ベッドにぽすりと横になった。
「無事に終わった」と宥仁からメッセージをもらい、末莉はほっと息をつく。宥仁の顔が見たいと思ったが、当日はさすがに忙しいだろうとやめておいた。
翌日、末莉は仕事から帰ってきたさい、宥仁の部屋に灯りがついているのに気がついた。
(どうしてるかな。ユージン)
末莉が様子を訪ねるメッセージを送ると、返信がすぐに来た。
『母さんいま病院行ってて誰もいなし、俺の部屋に来たら?』
誰もいないと逆に問題なのでは……とふと思うも、勝手知ったる幼馴染みの家だ。末莉は少しためらうも、玄関を開けてもらって一緒に宥仁の部屋に入った。
「わあ、なんだか懐かしいね」
「だろ?こないだの俺も同じ気持ちだったよ」
宥仁の部屋に入るのは13年ぶりだ。末莉の部屋ではゲーム、宥仁の部屋ではマンガを読むと小学生の行動は決まっていた。
彼は家の方針でゲーム機を買ってもらえなかった。それもあり、ゆるい末莉の家によく出入りしていたのだろうと思っている。
末莉は部屋の本棚をしげしげと眺める。さすがに小学生時代のマンガは置いていなかったが、宥仁の好きそうな本がたくさん収められている。末莉の知らない、高校生までの宥仁の趣味が垣間見えた。
「座れば?」
「あ、うん」
部屋にはソファなどない。末莉はベッドに座る宥仁の隣に腰をおろした。大人になって並んでベッドに座っているなんて、なんだか落ち着かない。そわそわする気持ちを紛らせようと宥仁にふたたび話を向けた。
「おじさんの容態は?」
「落ち着いてる。手術もうまくいったし、一安心できそうだよ」
「そうなの!良かったね!」
末莉は宥仁の父親の顔を思い浮かべる。最後に会ったのはひと月ほど前か。玄関先で出かけるときに挨拶していた。
宥仁の父親はロマンスグレーのイケオジだ。末莉にはいつもにこやかに話しかけてくれるが、一人息子の宥仁には厳しかったと聞いている。
「父さんもさ、なんか年取ったなって思った。小さくなったっていうか」
「ユージンが大きくなったからね」
「そりゃまあ、そうだけど。病気もあって昔みたいな覇気が無くなった感じがしたよ」
自分にとって絶対的だった父親の変化に、宥仁にも思うところがあったようだ。
「父さんは厳しかったけど、俺なりに尊敬してた。大学とかも父さんの希望してたとこに入って、これで良いと思ってたんだけど」
「うん」
「最近思うんだよ。これからは自分の人生、自分で考えて、決めて生きていかないとって。後悔するのはもう嫌だから」
「そっか……」
宥仁は何を後悔したのだろう。それを今聞くのは違う気がして、末莉はじっと彼の顔を見ていた。
「ふー……」
宥仁が深く息を吐き、ベッドにぽすりと横になった。