変わるなら今
れ、難しい問題を難なくこなす。先生からの話では、以前の学校で常に成績優秀であったらしかった。けれど、元々無口で大人しいのか、これまで誰かと会話している様子を一度も見たことがない。転入生ということもあって、何人かの女子が話しかけているところはあるが、その会話は長く続くことなくすぐに終わる。一人で過ごしたいという様子を伺ったのか、話しかける人も徐々にいなくなっていった。そんな蒼井さんを、美華達は「怖そう」、「生意気」等と口々に言い捨てるが、私には持っていない能力と凛々しい印象に、私は正直凄いなと思った。それに、一人で自由に過ごしているところが、単純に羨ましさを感じている。

「……麻、由麻!」
大きい声で呼ばれ、我に返った。私は慌てて、「ごめん、何?」と美華の方に目を向けた。美華は少々イラついた様子で、「もう、ちゃんと聞いてた?」と溜息をついた。私は手を合わせ、もう一度「ごめん」と謝る。美華は続けた。
「だから、今日のロングホームルームの話!文化祭の実行委員決めをするって、先生言ってたでしょ?だから、その時にちゃんとあたしを推薦しろって話!もう話聞いててよね~」
その話を聞いて、私は気付かれないように溜息をついた。そういえばそんな約束してたっけ。すると沙紀と杏奈からも、「大丈夫だよ!あたし達も協力するから」、「美華の恋を応援するって言ったでしょ?」等と口々に言われ、断る方が面倒くさいかなと思い、「分かってるよ。協力する」と笑顔で短く答えると、美華達はまた、「マジであたしアタックするわー」、「めっちゃ協力する」等と大きな声でキャーキャー騒ぎ出した。私も、美華の腕に絡められながらもそれに参加するが、試合終了の笛の音と共に、ロングシュートを決め周りから注目を浴びている蒼井さんの姿に、自然に視線を移していた。

「あーもう最悪っ!」
その日の放課後。私と美華、沙紀、杏奈以外に誰もいない教室。
スクールバックを机の上にバンッと叩きつけて美華が言った。
「ったく、木下マジむかつく!立候補してたあたしに譲るべきだっての!」
沙紀と杏奈は、少しでも美華の機嫌が治まるよう、「落ち着きなよ」、「まだ他に方法あるって」等と慌てて取り繕う。
 なぜ美華が怒っているのかというと、六限に行われたロングホームルームで、文化祭の実行委員決めが行われた。私は、美華達に従い、最初に美華を推薦し、沙紀と杏奈もそれに合わせ彼女を推薦したのだが、他の生徒から木下さんを推薦する声が上がり、クラスの投票で決めた結果、木下さんで決まりということとなった。その結果、美華に怒りを買う羽目になってしまった。

「……あーもうマジ気分悪い。由麻!」
「え、何?」
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