変わるなら今
「あたし気分悪いから、今日の数学と社会の課題やっといて」
え?と私は目を丸くした。
すると、沙紀と杏奈も、「あ、じゃああたしも!」、「あたしのもついでにおねがーい!」窓と口々に言いながら、それぞれのスクールバックの中から課題のプリントを取り出す。確かに今日は、数学と社会でプリントが出されていた。自分の分を含めると、流石にきつい。私は小さく首を横に振り、「無理だよ」と言った。
美華はそんな私の様子に、「はぁ⁉」と怒鳴り、取り出した数枚のプリントを床に放り、「良いから明日の授業までにやりなさいよ!」と言うと、スクールバックを片手に教室から出ていった。沙紀と杏奈も、「じゃあよろしくー」、「頑張ってね~」等と口にし、プリントを手渡すと、美華に続いて教室からでていった。
 
やっと解放され溜息を大きくついたが、それと同時に課題をしなければならないという負荷も感じている。
この三人、特に美華は、小さなことですぐ機嫌を損ね、その際はよくこんな風に言い訳して、課題や掃除当番、係の仕事等を押し付ける。私の態度が気に入らなければすぐ怒鳴る。美華が床に放り投げたプリントを拾って重ねていきながら、思った。
流石にちょっと疲れてきたな…
しかしその時、教室の扉の開く音が聞こえ、振り返った。その人物に、私は思わず小さく息を飲んだ。蒼井さんだった。帰りのホームルームが終わるとすぐ帰宅するため、この時間にいるのは珍しい。しかし、蒼井さんは私を一瞬見ただけで何も言わず、自分の机に向かった。忘れ物でもしたのだろう。彼女は机の中から教科書を取り出し、それを片手にした。二人は気まずいから早く帰ろうと思い、慌ててプリントをスクールバックの中に入れた。
すると、「ねぇ」と急に声をかけられ、私は驚いて彼女を見た。今まで話したことがないというのと、誰とも会話したところを見たことがないという理由で、声を掛けられたことに驚く。私は緊張しながらも、「…何、かな?」とぎこちないができる限り笑顔で答える。蒼井さんは視線を自分の机に向けたまま、
「あの三人とは仲が良いの?」
突然の質問に、私はドキッとする。ちょっと間を置いて、「まぁ…うん…」と曖昧に答える。「二年になって、声かけてくれて…どうして?」
「申し訳ないけど、今までの会話聞こえてたから、本当に仲良いのかと思って」
私は思わず、「あ、それは…」と慌てて次の言葉を探す。
「その…美華達はそういうところがあるけど…でも、悪い人じゃないよ?一人でいた私に声かけてくれたし…」
「良いように使われているだけじゃない?」
「それは…」
「人は変わるものよ」
< 6 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop