【二度目の恋は、突然に】片山聖ハイスペ総務部長が推す相手は、削り節の香り
響かない想い
その日を境に、裕太は、目に見えて優しくなった。
だが、その優しさは、傷ついた恵那の心には響かない。
裕太とラブホテルに行った、あの日。
恵那は、「カラオケをしたりゲームをしたりしている内に、そういう雰囲気になったら、そのときは……」と緩い覚悟で臨んだのだが、彼はそうではなかったようで、部屋に入るなり恵那を抱きしめ、行為に及んだ。
鼻をくすぐる欲情した男の臭い。
(嫌!)
彼の手から逃れようとするも、壁に押しつけられ、「お願いだから、俺を受け入れて」と懇願されて仕方なく身を任せたが、やはり初めての経験は、恵那の心と体にダメージを与えた。
願いが叶った喜びに喜色満面の彼とは逆に、恵那は、放心し、涙を流すばかり。
そんな恵那を放っておけず、家まで車で送り届けた裕太は、そのまま彼女の家に転がり込んだ。
メソメソする恵那を気遣い、昼も夜も、幼子にするような世話を焼く。
食事の世話、身の回りの世話、寝かしつけ……。
さすがに一日では回復せず、裕太は週明けから三日間、恵那に休みを取らせ、自分は普段通り出社した。
裕太は会社で親しい人たちに、「週末、竹井さんを誘ってショッピングに行ったら倒れてしまい、責任を感じて彼女の面倒を見ている」というようなことを言ったらしい。
そのため、恵那のスマホには、安否を問うメッセージが続々と寄せられたが、その中には、《本宮に騙されるな》とか《式場の予約は、任せて》といった二人の仲を揶揄するようなものもあった。
これでは、交際宣言したようなものではないか。
恵那は、頭を抱えた。
裕太さんのことは好きだ。家族になりたいと思ったこともある。でも今は、彼と共に歩む未来は考えられない。だって――。
折に触れ、心と体に蘇る、彼の重み、臭い、体温、そして情熱――。
あんなに強く感情をぶつけられたのも、あんなに乱暴に体を扱われたのも初めてで、それがこの先も繰り返されると思うと、心が千々に乱れ、逃げ出したくなる。
だが、彼に家に上がり込まれた今、何処にも逃げ場は見つからない。
このまま彼と結婚し、心を殺して生きていく選択なんて、出来そうにないのに……。
そんな恵那とは反対に、裕太は、恵那との結婚に向けて動いていた。
恵那と結ばれた夜、シーツについた純潔の証を見て、心が決まった。
恵那が自分との交わりを、散々、拒んできたのは、そういうことをするのが怖かったからだ。その夜も嫌だったのに、「俺を受け入れて」と懇願したら、体を許した。その結果、恵那が酷く痛い思いをし、口もきけなくなってしまったけれど……。
破瓜の痛みは、男には分からない。だが、恵那の様子から、心身共に、かなりのダメージを受けたことが分かる。子供を産むときも、恐らくそうなるだろう。それでも、引き受けてくれるならば。俺は、一生、恵那を愛し守り続ける……。
そう誓いを立てた彼は、まず、会社で、親しい人たちに恵那と付き合っていることを匂わせた。
次に、自分の親に電話をし、「結婚を考えている人がいる」と告げた。
後は、恵那の回復を待って彼女の両親に会いに行き、交際と結婚の許可をもらうだけだったのに。
突然、横槍が入り、裕太の計画は頓挫した。
そんなことが起こるとは、想像すら出来なかった。
それ以前に、裕太と恵那の結婚は体質的に難しいのだが、このときの裕太はそれに気付いていなかった。
だが、その優しさは、傷ついた恵那の心には響かない。
裕太とラブホテルに行った、あの日。
恵那は、「カラオケをしたりゲームをしたりしている内に、そういう雰囲気になったら、そのときは……」と緩い覚悟で臨んだのだが、彼はそうではなかったようで、部屋に入るなり恵那を抱きしめ、行為に及んだ。
鼻をくすぐる欲情した男の臭い。
(嫌!)
彼の手から逃れようとするも、壁に押しつけられ、「お願いだから、俺を受け入れて」と懇願されて仕方なく身を任せたが、やはり初めての経験は、恵那の心と体にダメージを与えた。
願いが叶った喜びに喜色満面の彼とは逆に、恵那は、放心し、涙を流すばかり。
そんな恵那を放っておけず、家まで車で送り届けた裕太は、そのまま彼女の家に転がり込んだ。
メソメソする恵那を気遣い、昼も夜も、幼子にするような世話を焼く。
食事の世話、身の回りの世話、寝かしつけ……。
さすがに一日では回復せず、裕太は週明けから三日間、恵那に休みを取らせ、自分は普段通り出社した。
裕太は会社で親しい人たちに、「週末、竹井さんを誘ってショッピングに行ったら倒れてしまい、責任を感じて彼女の面倒を見ている」というようなことを言ったらしい。
そのため、恵那のスマホには、安否を問うメッセージが続々と寄せられたが、その中には、《本宮に騙されるな》とか《式場の予約は、任せて》といった二人の仲を揶揄するようなものもあった。
これでは、交際宣言したようなものではないか。
恵那は、頭を抱えた。
裕太さんのことは好きだ。家族になりたいと思ったこともある。でも今は、彼と共に歩む未来は考えられない。だって――。
折に触れ、心と体に蘇る、彼の重み、臭い、体温、そして情熱――。
あんなに強く感情をぶつけられたのも、あんなに乱暴に体を扱われたのも初めてで、それがこの先も繰り返されると思うと、心が千々に乱れ、逃げ出したくなる。
だが、彼に家に上がり込まれた今、何処にも逃げ場は見つからない。
このまま彼と結婚し、心を殺して生きていく選択なんて、出来そうにないのに……。
そんな恵那とは反対に、裕太は、恵那との結婚に向けて動いていた。
恵那と結ばれた夜、シーツについた純潔の証を見て、心が決まった。
恵那が自分との交わりを、散々、拒んできたのは、そういうことをするのが怖かったからだ。その夜も嫌だったのに、「俺を受け入れて」と懇願したら、体を許した。その結果、恵那が酷く痛い思いをし、口もきけなくなってしまったけれど……。
破瓜の痛みは、男には分からない。だが、恵那の様子から、心身共に、かなりのダメージを受けたことが分かる。子供を産むときも、恐らくそうなるだろう。それでも、引き受けてくれるならば。俺は、一生、恵那を愛し守り続ける……。
そう誓いを立てた彼は、まず、会社で、親しい人たちに恵那と付き合っていることを匂わせた。
次に、自分の親に電話をし、「結婚を考えている人がいる」と告げた。
後は、恵那の回復を待って彼女の両親に会いに行き、交際と結婚の許可をもらうだけだったのに。
突然、横槍が入り、裕太の計画は頓挫した。
そんなことが起こるとは、想像すら出来なかった。
それ以前に、裕太と恵那の結婚は体質的に難しいのだが、このときの裕太はそれに気付いていなかった。