檻の外へー極道なんて、大嫌いー
翌日、時計の針が夜の11時を回った頃、重厚な扉が再び開いた。
疲れ切った表情で帰ってきたのは、若と、その背後でヘトヘトになっている兄の大樹だった。
「若、お疲れ様で……」
俺が立ち上がって頭を下げると、二人とも俺の挨拶には答えず、まっすぐベッドの上の玲美へと視線を向けた。
俺の報告通り、玲美はまだ昏睡状態のままだ。一日の仕事を終えて戻ってきた彼らの顔には、安堵の代わりに、深い苛立ちが浮かんでいた。
「チッ……」
若が短く舌打ちをし、ジャケットを脱ぎ捨ててサイドテーブルのライターを掴む。それと同時に、兄貴も深いため息をつきながら自分の煙草に火をつけた。
普段からヘビースモーカーの二人だが、今夜は異常だった。次から次へと新しい煙草を取り出し、灰皿に吸い殻が山のように積み上がっていく。紫煙が部屋の空気を重く淀ませ、若の眼光が、まるで眠る玲美の体に刻まれた傷の犯人を品定めするように鋭く光る。



しばらくして、沈黙を破ったのは若だった。
紫煙の中に目を細め、彼は唐突に口を開いた。
「晴樹。お前、玲美と同じマンションに住め」
「え……?」
俺は耳を疑い、呆然と若を見返した。
玲美が住んでいるのは、組が管理する超高級マンションの最上階だ。そこに、俺が?
「いいんすか!? 若、それって本気で……!」
「……冗談で言うか。ボケが」
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