札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~

父は戦で仲間を失ったとき、自分を責め続けていた。
兄も悔しさから慟哭していた。
地獄のような光景は悪夢として何度も苦しませるのだ。

けれど次の日には何事もなかったかのように振る舞わなければならない。
兵たちの士気に関わるからだ。
指揮者は弱音も吐くことも許されない。
誰かの悲鳴を聞きながら、いつ崩れるかわからない屍の上に立ち続ける。

彼の言葉はそれとまったく同じものだ。
きっとこの作戦を指示したのはロベールなのだろう。

今こそ英雄と呼ばれてはいるが、きっと失敗していれば国中から責められていた。
そんな未来があったかと思うと恐ろしいが、身近で見ていたからこそ、それが理解できるような気がした。

オリヴィアはロベールをそっと抱きしめた。
汗臭いとか血がついてしまうとか、そんなことはどうでもよかった。
彼の気持ちが理解できるからこそ、こうすることしかできない。

(お母様はこうしてお父様を毎回、支えていたのよね)

母は何も言わずに、父の気持ちを受け止めていた。
あの緊迫した状態では気休めの言葉など何の役にも立たないと知っていたからだろう。
だけど最後は必ずこう言うのだ。
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