札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
「大丈夫、あなたはまだ戦える」

「…………!」


ロベールはその言葉に上半身を起こして、オリヴィアを見た。
オリヴィアは彼の頬を両手で包み込むように掴んだ。
スカイブルーの瞳が戸惑うように左右に揺れていた。
押し潰されてしまいそうなプレッシャーは無意識に本人を追い詰めていく。

母の腕の中が父にとっても唯一、弱さを吐き出せる場所だった。
今でこそあんなふうになってはいるが、両親の絆は深い。
だからこそ父は母に楽をさせたい、今までの分まで幸せにしたいと強く強く思っているのかもしれない。
その中でも印象的な言葉があった。
あの時もこうして父の潰れそうな心を支えていた。


「わたしがあなたのそばにいる。信じているわ」

「──っ!?」


そう言って女神のように微笑んだ母の表情を今でも忘れられない。
その言葉の意味もあの頃はまったく理解できなかったが、あの日……追い詰められた状況から一気に逆転したのだ。

母と同じように呟いたオリヴィアだったが、ロベールの仮面がずれたことで正気を取り戻す。
彼の端正な顔立ちが露わになると同時にパッと手を放した。
そして誤魔化すように手を上げて、何もしていないとアピールしつつ目を逸らす。
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