札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
──コンコン

ちょうど体があったまってきたというときに、寝室をノックする音が聞こえた。
エリーは最後までどうするべきか迷っていたようだが、ロベールが足を踏み入れた瞬間に、深々と頭を下げて部屋から一瞬で姿を消した。

(彼女が素早く動けるのも、元蜘蛛の影だったからなのね)

オリヴィアが感心していると、目の前には白いシャツに黒いパンツでラフな格好をしているロベールの姿。
いつのまにかオリヴィアの前で男性の姿で現れ、変装もしなくなっていた。

体格もよく、背もオリヴィアよりは高い。
いつも着痩せしているのか、バキバキに鍛えた胸板がシャツの隙間から覗く。
兄のペリエほどではないが、仕上がった肉体に期待が膨らむ。

(どうやって子どもの姿になっているのか気になるわ……)

変装の技術が気になるところだが、ロベールは腕を上げて仮面を外した。


「仮面はよろしいのですか?」

「勝負には必要ないだろう?」


怪我人の治療をしてからというもの、ロベールのまとう雰囲気はだいぶ柔らかくなったような気がした。
ロベールはじっとオリヴィアの格好を見ると、なぜか顔を逸らしてしまう。


「いつもその格好でここにいるのか?」

「はい、毎晩ロベール様を待ってました」

「…………そうか」


なぜかロベールの頬はほんのりと色づいていく。
戦えることに昂っているのかもしれないと、オリヴィアは構えた。


「そろそろやりますか?」

「ああ、それもいいがとりあえずは少し休みたい」

「わ、わかりました」


やっとロベールの実力をみることができると思っていたが、しおしおと気持ちが萎んでいく。
ロベールはベッドに腰をかけて隣を手のひらで叩いた。

(ここに座れということかしら……)
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