札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
謎の安心感を抱えながら、オリヴィアはアイナスとともにお茶の準備に向かった。
あのときの上から目線のロベールが嘘のようだ。
本当の彼がわからなくなっていた。これもロベールの作戦なのだろうか。

(わたしが逃げられないように、お父様から籠絡しようとしているの……!?)

お茶を用意してから数時間の間、二人は応接室でずっと話し込んでいた。

その間、アイナスとともに屋敷を掃除していく。
というよりは全身黒い衣装に身を包んだ人たちが手伝ってくれたため、凄まじい勢いで屋敷が綺麗になっていく。

アイナスによれば彼らは〝影蜘蛛〟と呼ばれており、影のように裏で動く存在のようだ。
彼らは特殊な訓練を受けているようで、本来ならば動いていることすら気づかれてはいけないらしい。
オリヴィアが彼らを見つけるたびに気まづそうに姿を隠している。

(足音も気配もほとんどない……動きが早くて目で追えなくなるわ)

オリヴィアが忙しく首を動かしていると、いつのまにかアイナスが目の前に立っていた。
驚いたオリヴィアは後退すると壁に背をぶつけてしまう。

そして荒い鼻息を感じて振り向くと、そこにはアイナスを見つめるジョセフィーヌの姿があった。
どうやら再び彼に求愛しているようだ。
アイナスは汚れた布を絞りながら笑顔でかわしている。
その姿にオリヴィアは驚くばかりだ。


「一通り、綺麗になりましたね」

「……はい、ありがとうございます」
 
「いえ、僕たちはロベール様の命令で動いているだけですのでお礼は不要ですよ」

「…………!」


抑揚のない声は冷たく、ゾッとしてしまう。
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