札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
「オリヴィアとっ、わたくしに迷惑をかけて……っ! 絶対にっ、許しませんからっ」

「ぐっ……! ブッ……! グエッ! ま、待て……ギャッ」


父の体が壁と床に打ち続けられているため会話が成り立たない。
原型がわからないほどにボコボコになった顔の父を放置した母は、眉を八の字にして涙を拭いながらオリヴィアの元へ。


「このままここにいてもオリヴィアが幸せになれないわ。わたくし、この人と離縁するから……!」

「お母様……!?」

「フゴバゴ……! ベッベェッ!?」


父は頬が腫れてしまい何を言っているかわからないが、おそらく母を引き留めているのだろう。


「落ち着いて、お母様……!」

「いいえ、落ち着いていられない。あなた、すぐに手続きをしてちょうだい。それと侯爵家に連絡して! オリヴィアだけはなんとしてもわたくしが……っ」


そう言いかけたところで、母はフラリとよろけてしまった。


「──お母様っ!」

「ミリッ!?」


オリヴィアはなんとか母を支えるが、勢いあまってそのまま一緒に倒れてしまう。
肌が湯のように熱い。荒く息を吐いている。
いつもの母とは様子が違い、かなり無理をしていたことに気づく。


「お父様、医師を……!」


今すぐに医師に診せたほうがいいと、オリヴィアは直感的にそう思った。
父は初めて見る母の弱った姿にうろたえ焦っていたようだ。


「だが、そんなことをすれば皆に心配をかけてしまう……!」


頼り甲斐のある領主でいたいのだろう。
父が領民のことを大切に思っているのは知っている。
それはオリヴィアも同じだ。
だけど自分の家族も大切にするべきではないだろうか。

今まで黙って父を支え続けた母がこのような状態になっているのに、お金の心配をしている。
オリヴィアは怒鳴るように問いかけた。


「──お母様の命とプライド、どちらが大切なのですか!?」

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