札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
「わたくし驚きましたわ。まさかロベール殿下に近づける方がいらっしゃるなんて」
「……じゅる」
「何……?」
「なんでもありません!」
アリスの仄暗い表情はオリヴィアのよだれ……水音によって遮られてしまう。
顔を背けてよだれを啜ったオリヴィアは誤魔化すように笑みを浮かべた。
「どうやってロベール様のお心を射止めたのかしら」
人形のようなアリスから次々と言葉が紡がれていくことに感動していると、彼女から「聞いているの?」と圧のある声が聞こえて、思わず首を横に振る。
「まったくわかりません」
言葉通りだった。
彼が何を基準にオリヴィアを選んだのか、それを知りたいのはこちらのほうだ。
(……丈夫そうだから、とかじゃないかしら)
ディルムーン辺境伯の娘ということも、後から知ったようだった。
となれば、彼を見ても札束でビンタされても泣かずにいたからではないかと推察できる。
(きっとわたしの前の人たちは札束ビンタに耐えられなかったのよ)
本当の理由は不明だが、オリヴィアはそう思っていた。