余所者-よそもの-【 3 】
「女一人の為に、この終わりの街を獲ろう言うんか」
「そうだ」
「そんなしょうもない戦争に、露天街が手ぇ貸すとでも?」
「まぁ、そうだな」
ユキは不敵に笑ってみせた。
「どうせ老い先短い人生だろ?最後に混沌を楽しめよ」
垂れた瞼から、八賀の鋭い瞳が光る。
「………」
私はハラハラとしながら、二人のにらみ合いを黙って見守っていた。
すると。
「ガーハッハッハッハッハ!!」
八賀は突然、大口を開けて笑いだす。
「死んだ面しとったおまんが、エエ顔するようになった!」
その言葉に、思わずユキを見上げる。
……死んだ面。
――『俺ぁ瑞生のガキが好かん』
――『理屈こねた男は好かんねや。アイツはズル賢いぞ』
かつて、そう言っていた八賀。
今のユキは、この人の目にどんな風に映っているんだろう。
「勝てば官軍。負ければ賊軍」
「……結局、お前はどっちにつく」
「ワシは老いぼれや。戦線には出ん」
「………」
八賀は踵を返した。
背中越し。
ひと際通る声で、言い放つ。
「――露天街は、好きに使え」
それって……。
「官軍なるか。賊軍なるか。茶ァ飲みながら待っとるわ」
そうして、静かに立ち去っていく八賀。