余所者-よそもの-【 3 】



子供のような幼い声色。

耳元でこう言った。



「ママ、大丈夫だよ」



そうして再び。

千景の全身が、ドクンと膨れ上がった。


ゴウゴウと荒れ狂う風の中、耳元に直接響いた二度目の声は、もう。


低く、どこまでも、深い闇に堕ちていた。



「死んでも――…護るから――…」



ふわりと浮いて、落下していく身体。


私を閉じ込めていたアパートが瞬く間に遠ざかる。

視界の端では、千景の白い髪と私の黒い髪が、吹き上がる風に舞って一瞬だけ絡み合った。



「――……っ」


着地の衝撃に、身体が大きく揺れる。


――ダダンッ。

千景の両足がコンクリートを叩く音が、遅れて住宅街に反響した。


「………」


二階の高さから飛んだのに、私の身体に痛いところは一つもない。

千景は着地の瞬間、深く曲げた両脚の重心を即座に入れ替え、その衝撃を殺していた。



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