追放先で再会した初恋の男は、罪深い私を愛し続ける 〜断罪令嬢エリザベートの初恋回帰〜
第二章

懺悔とストール

翌朝、身体の傷みを感じてエリザベートは目覚めた。

昨晩寝た場所はこれまで邸で使っていたベッドとは造りが異なり、木板に布を重ねただけの平民としてもかなり質素な寝床だ。
これには改良の余地がある。

雨風を凌げる場所があり、当面の食料が確保できる生活は追放の身としては有り余る贅沢だが、それでも睡眠は極めて重要。

人間、睡眠と食事を疎かにすると心が一気に荒んでくるものとエリザベートは心得ている。
それらを安定して確保するためにも、まずはこの土地を理解し、村の人間と交流しなければならない。

辺境伯の要請に応じる条約には報酬として僅かばかりの金銭が支払われることとなっているが、それはまだ当面先の事になるだろう。

最優先すべきは水や食べ物、それから針と糸を買えるように自立したい。
そのようなことを考えながら窓を開けると、冷気が流れ込んできてエリザベートの肌を撫でた。

ふと、昨日のベリルの言葉が蘇る。

『俺を遠ざけようとしても無駄だぜ』

エリザベートの記憶の中のベリルは今と同じように強引だったが、しかしこちらの感情の機微を読んで踏み込んで来ることはしなかった。

エリザベートが引けば、ベリルも引く。
引いて別のものを二人で見つめた。


かつて彼の実家の養鶏所で特別な場所を見せてもらった時もそうだ。
落ち込んでいたエリザベートに何があったか尋ねるでなく、攫うように腕を引いて「今は俺と居るだろ」と言うのだ。

その瞬間だけは明るい気持ちになれた。
先々の事を考えて沈みがちなエリザベートに対して、ベリルは今その瞬間に心を繋ぎ留めようとしてくれていた。

――――蘇るのは鶏小屋での記憶だった。

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