〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する


「あの、人違いだったら大変申し訳ないですが……白河先輩ですか。関東医科大学の」

「嬉しいな、覚えていてくれたんだ」

 間違いがなかったことにひとまずホッとする。

 まさか、こんなところで白河先輩に再会するなんて思いもしなかった。

 白河先輩は医科大学時代、入っていた医療ボランティアサークルで二年ほど一緒に活動していた。

 といっても、個人的に連絡先を交換していたり、ましてやふたりで話すこともほぼなかったと記憶している。

 この容姿に、サークル内でも頼れるリーダーシップをとっているタイプだったから、女子たちに常に囲まれていた。

 その上、当時のサークル内での友人たちの話では、白河先輩は何院も経営をしている家のご子息だと言っていた。お父様が医療界の重鎮だとも……。

 のちのち知ったのは、白河グループの後継者ということだ。

 白河グループは、日本国内各方面に総合病院を持っている。

 私だって医師の家系に生まれたけれど、白河家とは月とすっぽんだ。

「医療ボランティアサークルで一緒でしたよね。その節は大変お世話になりました」

「いや、お世話なんて。こちらこそ、当時はありがとう。今は、仕事は?」

「はい、小児科医として勤めています」

 応えると、白河先輩は綺麗な顔に柔らかい笑みを浮かべる。

「そうか、小児科医に。小宮山さんらしいな、子どもに受けも良さそうだし」

「いえ、そんな……。怖がられてるかもしれないです。まずい薬出す先生とかって」

 そう言ってみると「ああ、なるほど」なんて白河先輩は笑う。

「白河先輩は、心臓血管外科医になられて、ご実家の病院で働かれているんですか?」

 白河先輩が心臓血管外科に進むことは、噂好きな女子たちから聞いて耳にしていた。後継者としてすでに勤めているのだろうか。

「しばらく、カナダのほうにフェローで行ってたんだ。帰ってきたのはつい最近。今は、自分のところに在籍しつつ、お世話になった先生のところで執刀したりしてる」

「そうだったんですね」

< 12 / 89 >

この作品をシェア

pagetop