〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
学生時代、白河先輩と個人的な交流をしたことはない。
ふたりで食事や飲みに行ったことはなかったし、むしろこんな風に個人的なやり取りもしなかった。
このメッセージに対してどう返したらいいのかわからない。
誘ってもらえたのは素直に嬉しい。
サークル時代は、近寄ることも許されないような雲の上の存在だったし、むしろ周囲の雰囲気からそんな気も起きなかった。
届いたメッセージの通り、私ももっと話がしたかったのが本音。
海外に行っていたと言っていたし、白河先輩の近況や、そのうち関わるであろう自身の病院経営についても考えを伺いたい。とても勉強になりそうだ。
【私も同じです。もっとお話したかった。ぜひ、改めてお話聞かせていただきたいです】
迷いなく送信し、数分経ってからハッと我に返った。
ちょっと待って。勢い余って返信しちゃったけど、これって社交辞令かもしれないよね……。真に受けすぎな返事しちゃった気がする。〝ぜひ〟なんて圧強めだし。
置いたばかりのスマートフォンを手に、送信取り消しを考える。でも、すでに既読がついていて絶望した。
もっと慎重に返信すればよかったものの、時すでに遅し。
それから白河先輩からの返信が止まり、落ち着きなくスマートフォンを取ったり置いたり繰り返す。
画面が光ったと思えばポップアップされたのは企業広告のメッセージだったり、それを見て〝なんだ……〟なんて心の中で呟いた。
白河先輩のほうも、私の返信を社交辞令で捉えてくれたのかもしれない。だからやり取りが終わった。そう考えるのが腑に落ちる。
そうまとめながらも、メッセージが届くのをどこかで待っている自分がいてモヤモヤしてくる。
もう気にするのはやめようとスマートフォンを置いて立ち上がったとき、視界の端で画面が点灯するのが目に入る。
そこに白河先輩の名前とメッセージの返信がポップアップされていて、座り込んでスマートフォンを手に取った。
【それならよかった。近いところで都合のいい日を何日か挙げてもらえたら、その中で日程決めます。場所はこっちで用意するので、食べられないものがあれば事前によろしく】
内容を噛み砕くようにゆっくり何度も読み返す。
社交辞令じゃ、ない……?
早速スケジュールを開き、都合がつく日をピックアップした。