〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
対面した白河先輩は今日はネイビーカラーのスリーピース。~~~で、前回ホテルで会ったときより少し華やかな印象だ。
彼の装いを目にして、念のために場違いにならないフォーマルで来て良かったと内心ホッとする。
今日はライトグレーのパンツスーツを選んだ。インナーはホワイトのノースリーブをイン。
女性としては背の高い部類に入る百六十五センチの身長だから、フォーマルを含め普段からパンツスタイルを選ぶことが多い。
「それならよかった。帰りは自宅まで送らせてもらうよ」
「えっ、いえ、それは申し訳ないです」
そんな話をしながらドアへと向かっていく白河先輩の背中を追う。
ガラス抜きされた白い扉に近づくと、中からスーツの男性スタッフが扉を開く。
「いらっしゃいませ」
出迎えるその台詞さえ高貴に聞こえるのは、この雰囲気にすでに呑み込まれているからだろう。
エントランスを入ると、「白河様、ご案内します」とまた別のスタッフが奥へと先導していく。
邸宅風のレストラン店内は、白を基調とした明るい雰囲気で、フロアには白いクロスがかけられた丸いテーブルが並んでいる。
一テーブル五人ほどかけられる席もあれば、ふたりがけの席もあるようだ。
席は半分くらい埋まっていて、それぞれ食事を楽しんでいる。客層は大人ばかりだ。
案内されたのは、フロア内の席ではなく奥に進んだプライベート席。個室の席だというのに驚きながら、スタッフに椅子を引いてもらい着席する。
壁には調度品の数々や、絵画が飾られている。部屋の中をきょろきょろと眺めていると、「お食事の準備をさせていただきます」とスタッフが部屋を出て行った。