〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する


 対面した白河先輩は今日はネイビーカラーのスリーピース。~~~で、前回ホテルで会ったときより少し華やかな印象だ。

 彼の装いを目にして、念のために場違いにならないフォーマルで来て良かったと内心ホッとする。

 今日はライトグレーのパンツスーツを選んだ。インナーはホワイトのノースリーブをイン。

 女性としては背の高い部類に入る百六十五センチの身長だから、フォーマルを含め普段からパンツスタイルを選ぶことが多い。

「それならよかった。帰りは自宅まで送らせてもらうよ」

「えっ、いえ、それは申し訳ないです」

 そんな話をしながらドアへと向かっていく白河先輩の背中を追う。

 ガラス抜きされた白い扉に近づくと、中からスーツの男性スタッフが扉を開く。

「いらっしゃいませ」

 出迎えるその台詞さえ高貴に聞こえるのは、この雰囲気にすでに呑み込まれているからだろう。

 エントランスを入ると、「白河様、ご案内します」とまた別のスタッフが奥へと先導していく。

 邸宅風のレストラン店内は、白を基調とした明るい雰囲気で、フロアには白いクロスがかけられた丸いテーブルが並んでいる。

 一テーブル五人ほどかけられる席もあれば、ふたりがけの席もあるようだ。

 席は半分くらい埋まっていて、それぞれ食事を楽しんでいる。客層は大人ばかりだ。

 案内されたのは、フロア内の席ではなく奥に進んだプライベート席。個室の席だというのに驚きながら、スタッフに椅子を引いてもらい着席する。

 壁には調度品の数々や、絵画が飾られている。部屋の中をきょろきょろと眺めていると、「お食事の準備をさせていただきます」とスタッフが部屋を出て行った。

< 19 / 89 >

この作品をシェア

pagetop