〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
ひとつひとつの話に聞き入ってしまう。話し方なのか声のトーンなのか、聞かせるのが上手いというか、もっと話を聞きたいと思うから不思議。
大学時代から、白河先輩は他の学生とは明らかに格の違いがあった。
なにに対しても意欲的で、常に一歩先を進んでいる人。だからといって地味ながり勉タイプではなく、完璧な容姿に華やかさがあるから女性の注目の的。しかしそれを鼻にかけることがなく友好的だから、男女年齢問わず人望も厚かった。
とにかく人間力が高い人だという印象が強い。もしかしたらもう人間数度目なのかもしれない。
サークル活動時代、そんな白河先輩は私にとって雲の上の存在で、ほとんど関わることもなかった。
でも、サークル内では常に白河先輩についていろいろな情報が回ってきていた。
『白河先輩って、心外の研究室によく出入りしてるみたい』
『白河先輩、TOEFLで高得点取ったらしい』
耳にする話はどれも同じ医師を目指す者として興味深かったし、機会があればいろいろ話を聞きたいと思ったこともあった。
それは当時叶うことはなかったけれど、巡り巡って今こうして話が聞けているのは感慨深い。
前菜が終わりそうになると、続いてスープが運ばれてくる。
夏野菜のポタージュは、オレンジ色に近い濃い黄色で、野菜の旨味が凝縮されていそうだ。
「俺の話はこのくらいにして、小宮山さんの話が聞きたいな」
スープを運んできたスタッフが立ち去ると、白河先輩が話題を私に向ける。
「私の話、ですか。白河先輩みたいに興味深い話題もないですよ。ためになる話もできないですし……」
「そう思ってるのは小宮山さんだけで、俺にとってはなんでも興味深いよ」
そんな風に言われてしまうと困ってしまう。でも、同時に嬉しくも感じるのはなぜだろうか。複雑な感情に困惑する。